10/13
淡路島 洲本港にて待機
 走行距離 : 0 NM
 Total : 3174.5 NM
 走行時間 : 0:00
 Total : 561:35
朝5時前から強風が音を立てて吹いています、今日は「友が島水道」の潮止まりの時刻を考えて9:30に出港する予定ですが風が弱まる気配は全くありません、岸壁から海上を見ると一面「うさぎさん」が跳んでいるのが見えています。出港予定を11:00まで延ばしても「友が島」では相変わらず10m/s近い北東の風が吹いるので今日の出港は諦める事にしました。
目の前の「ポートピア」で昼食をして昼寝から起き出すとやっと風が収まっていました、もう今夜はこの場所でユックリします。久しぶりの太平洋の一歩手前でまた足踏みをする事になった「さつき」です。

よくある質問・その7 「ヨットの操作は難しいみたいですね」
「ベクトル」、「揚力」、「反作用」だのと難しいことを言って「私はこんなに難しいことができる」と言うヨット乗りがいるので、「操作が難しい」というイメージが持たれてしまっているのが残念ですが、帆船は「ベクトル」も「数学」も「物理も」無い古代から存在している極めて単純な乗り物です。
帆に風が当たるまでシート(ロープのこと)を引けばヨットは前に走るように作られています。後は舵で方向を定めていれば良いのですが、私の船はオーパイ(オートパイロット・自動操舵装置)が舵を操作してくれますのでさらに楽になっています。
「でもー」と言う方に・・・、モーターボートは操作が難しいので「免許制度」があり試験に合格しなければ操縦することはできません。あなたは「ヨット免許」の事を聞いたことがありますか?そんな免許はこの世に存在しません。小学生くらいからまるで自転車に乗るのと同じように免許無しで乗ることができます、それほど簡単な乗り物なのです。
もう一つのエピソードがあります、10年以上前の事でしょうか、全くヨットなどに乗ったことのない会社の大先輩が定年退職をした時、かねてからの希望だった世界旅行を現実のものとして考えはじめました、色々と考えた挙句退職金の一部でヨットを購入、すぐに太平洋に乗り出して5年近くかけて世界一周をしてしまいました、最初の2-3日で風を利用するコツを覚えてしまったそうです。

よくある質問・その8 「こんな船は買う時高いのでしょう」
ヨットは経年変化の少ない材料で作られているので中古で購入するのが結構一般的で100−200万円くらいから良い船を入手できます。例えば2000CCクラスの乗用車を買う事を思えば、ヨットには自動車税もないし燃料費もかからず、5年間で計算しても必要なお金は各段に少ないのです。別の比較をすると、普通の人の自家用車は年間200時間くらいしか利用しないのに、ヨットは年間2,000時間くらいも普通に利用できるのです。
10/14
和歌山県・日高町・阿尾(あお)港へ
 走行距離 : 30.2 NM
 Total : 3204.7 NM
 走行時間 : 5:30
 Total : 567:05
昨夕から「さつき」の前に係留していた「Phenix」のYSDさんから紀伊半島の港の情報をいただきました。今日は「淡輪(たんのわ)ヨットハーバー」から多数のヨットがこの浮桟橋に集結して賑やかになるそうで、銚子の私から見るとこのロケーションはとても羨ましい限りです。
友が島水道の潮止まりの時刻を考慮して9:50にYSDさんにもやいを外していただき、見送りをうけながらの出港となりました。港外に出ると5m/s以上の風と反流の連れ潮で7ノット以上の快適セーリング、潮止まりの時刻前に向い潮に乗る事になって一時3ノット台まで船速が落ちてしまいました。
紀伊水道に出ると波は静か、風もポートのクオーターで弱くなり機走状態が続きましたが次第に連れ潮になり一直線で阿尾港へ、直前の方杭(かたくい)には銭湯があるとYSDさんから聞いていたので、何度も迷った挙句に少しでも次の目的地に近い阿尾に入港する事にしました。15:200元フェリーが発着していたと思われる浮桟橋に着岸、5時間30分、対地距離30.2NM、対水距離31.3NM、スタートが遅かったので今日はここに停泊する事に決めました。
入港が遅かったので昼寝はパスして儀式の後近くの商店で買い物、そして漁協前の民宿「共栄丸」でお風呂をいただきました。次は周参見(すさみ)港の予定です。
10/15
和歌山県・すさみ町・周参見港へ
 走行距離 : 36.2 NM
 Total : 3240.9 NM
 走行時間 : 6:30
 Total : 573:35
7:10に曇り空のもと出港しました、平日なのに防波堤には釣り人が多数います、ヒマな人が結構いるのですね、(人の事は言えないか?、私もヒマといえばヒマです!)。港外に出て岬を周るために西に向かうと、大阪湾方面から強い風が吹いてきています、それに伴った高い波で「さつき」は木の葉のように翻弄されてしまいました。日ノ御碕を周れば波は陸地の影になる計算なので、一時間弱ジッと我慢をして日ノ御碕の西側で必死のジャイブ、日ノ御碕の南側に入ると波は収まったものの風は相変わらず強くてポートのランニングでエンジンを落としても常時7ノット以上、漁船の群れに気を使いながら前方に見えだした「南紀白浜」の町並みに向かって快適(?)な帆走となりました。
(帆船は真後ろからの風で走るものと思っている方が多いと思いますが、真後ろからの風で走るのは気持ちのいいものではありません、風向の変化に常時気を使わなければならず緊張の連続です、ヨットにとってはできるだけ避けたい走り方なのです)
田辺港に差し掛かると急に風が落ちてきたので、今度はエンジンを巡航回転の2,100回転に上げて機帆走となりました。「こんなところでユッタリ温泉につかりたいなぁ」と紀伊白浜の温泉街を眺めていると、黒潮の反流に突入しスピードがグングン落ちて5ノット以下になり真後ろから大きなうねりが襲ってきます、これが久しぶりの太平洋のうねりです。暗礁を避けるため正確に39度で周参見港へ入り13:400西防波堤内側に着岸、6時間30分、対地距離36.2NM、対水距離37.1NM、最後の黒潮反流の影響が少しあったようです。次は新宮に向かう予定です。
10/16
本州最南端・串本港へ
 走行距離 : 22.6 NM
 Total : 3263.5 NM
 走行時間 : 3:50
 Total : 577:25
起きてすぐに堤防に登って海面をチェックすると、昨日より静かな海面で「うさぎさん」も見えません。すぐ出港を決意し7:30に離岸して港外でセールを揚げて潮の岬方向へ。風はポートのクローズ5m/sくらいと少し強め、快適な走りで私の前に係留していた船台が朝早く出港して東に向かって移動しているのが見えましたが、すぐに追いつき追い越してしまいました。東に行くにしたがって次第に風が強くなり、ヒールがきつくなったのでジブを閉じてメインに当たる風を逃がしながら、さらにエンジンを落としても7ノット以上のスピードが出ています、当然まわりは白い「うさぎさん」だらけ。時折10m/s以上の突風(ブロー)が吹いてしぶきが襲ってきます。何度か潮の岬手前の有田港に逃げようと思いましたが、「さつき」は頼り甲斐がある走りを見せていて、さらに度々保安庁の情報を携帯でチェックすると潮の岬の風は3m/s、波は1-2mと穏やかな値を示しています、たぶん潮の岬を過ぎると落ち着くものと信じて東南東方向へ波・風と格闘のクルージングとなりました。
しかし、潮の岬が近付くに連れて波はさらに高まり、そばを航行する100mもある大型船が大きくピッチングをしています、幸い波の波長が長いので「さつき」は波に駆け登ったり滑り降りたりと、まるでジェットコースターのよう。潮の岬を過ぎると多少波は小さくなったのですが、相変わらずブローがあります、今日の目的地の「新宮」はもう諦めて串本港に避難することにしました。
11:20港内の北西の岸壁に着岸、3時間50分、対地距離22.6NM、対水距離21.7NM、短い時間でしたが我ながらよくあんなに荒れた海を乗り切って来たものだと我ながら感心しています、「さつき」はもっと荒れた海を乗り切った経験があるので、もちろん恐怖心は全くありませんでしたけど。
もやいを取って一段落すると、小豆島で合流したYMDさんの船が、勝浦行きを中断して串本港に入ってきました。久しぶりに時間ができたので、昼食・コインランドリー・昼寝のフルコースの後、皆でそろって銭湯に行きスッキリしてから楽しい夕食となりました。
ここは町が近く買い物も食事も大変便利な港です。次は海上の回復を待って近場ですが「新宮」に向う予定です。
10/17
新宮港・三輪崎漁港へ
 走行距離 : 19.5 NM
 Total : 3283.0 NM
 走行時間 : 3:30
 Total : 580:55
起床して気象状況をチェック(シャレではありません、毎朝の恒例です)、南方に横たわっている停滞前線が東に移動するにつれて風・波ともに次第に弱まる傾向にあります、ここ串本港でも昨日のような強い風は吹いていません、今日の出港を決意しました。一足先にYMDさんのボートが出港するのを手を振って見送りました、「また銚子でお会いしましょう」。
7:20離岸、昨日から朝の気温がさらに下ったので久しぶりの長袖シャツ姿です、走り始まって太陽が高くなるまでは、しばらくさらにウインドブレーカーを羽織らなければならないほど季節が移って来たのですね。大島との狭い海域を抜けると昨日のうねりが残っていましたが、さほど気になる大きさではなく次第に弱くなってくるのがわかります。さらに厚い雲が去り晴れて来ました、やはり晴天下のクルージングは気持ちが良いものです。 すっかり晴れて風が弱まってくるころ「那智勝浦港」の前を通過し、岩礁地帯を避けながらすぐ北にある新宮港へ、須磨のSZさんからご紹介された三輪崎ヨットクラブのMEDさんにご指示いただいたクラブ所有のいかだに10:50に着艇、3時間30分、対地距離19.5NM、対水距離18.1NMでした。すぐにMEDさんが忙しい中駆けつけて来られて、「移動用に使ってください」と鍵付きの軽自動車をおいて行かれました、初対面なのにMEDさんの心遣いに何度もお礼をしました、ヨットの世界の人のつながりの深さをまたまた感じてしまいました。
その後同じクラブのYMMTが来艇、続いて出発当初から時々連絡をいただいていたスキー仲間のSGOKさん(通称GENさん)が当地名物の「めはりずし」の昼食を持参しての来艇、久しぶりにお会いして一緒に昼食を摂りながらの歓談となりました。SGOKさんが仕事にもどられてから、MEDさんからお借りした軽自動車でジャスコに行き買い物、やはり自転車より格段に便利ですね。
夜になって、三輪崎駅近くにある食事処「よよい」で夕食、時間が早かった事と他にお客さんがいなかったので、気さくなご主人達と歓談しながら大変おいしい夕食になりました。
次は引本港か長島港あたりに向かう予定です。
10/18
三重県・長島港へ
 走行距離 : 40.2 NM
 Total : 3323.2 NM
 走行時間 : 7:45
 Total : 588:40
昨日係留したこの「いかだ」は大変良くできています、縦18m、横8mくらいで、屋根があり、中には電気・水道が引き込んであり、さらにトイレと流し台が設置してあります、他の浮桟橋よりずっと快適な造りです、このいかだを提供していただいた「みわさきヨットクラブ」に感謝します。
7:15に隣のクレーン台船が出港するのに続いて離岸、港外に出ると風・波ともに程良く、ジブを開き北東方面に突き出て見えている「三木崎」へ向かいました。さらに正確に方向を決めようとGPSをチェックしたら、なんと新宮より東の地図が出てきません。このGPSは非常に安かったのですが、日本の地図が地域ごとに7つのROMに分けて入っていて、地域が変わるとROMを入れ替えることになっています、私としたことが紀伊半島に入ったら交換するつもりが、ついつい忘れてしまっていたのです。
しばらく漁船や対向船のいないことを確認してから揺れる船上でGPSのカバーを外し慎重にROMの交換をすることになりました。10分程で交換完了これで銚子まで地図がつながりました。
三木崎に近づくと北東の風が東に変わりうねりが強くなって、さらに向い潮に突入、潮と風を向いから受けながら三木崎を回り北に向かうとうねりがさらに大きくなりましたが、一昨日の潮の岬沖の状況に比べればずっと楽な部類、鼻歌まじり(?)で長島港に向いました。
途中短いにわか雨に会ってから、15:00に長島港の製氷工場と給油岸壁の中間の岸壁に着岸しました、向い潮がきつかったため今日は7時間45分もかかりました、対地距離40.2NM、対水距離45.4NM。うねりがあり船上で食事ができなかったので、すぐに漁協前のレストランに行き暖かい食事となりました。次は的矢港辺りの予定ですが、風が強まる予報が気になります。
10/19
長島港で待機
 走行距離 : 0 NM
 Total : 3323.2 NM
 走行時間 : 0:00
 Total : 588:40
朝早くから強風が音をたてて吹いて、東にある大王崎では25m/sをこえる風が観測されています。また明けてからは滝のような雨になりました、さすが日本一雨量の多い場所という感じです。
昨夜から待機を決めていましたので、寝床でウツラウツラした後、ハム・パン・卵・トマトを使い豪華なサンドイッチを作り堪能、夕方にはおでんを暖めベーコンと玉ねぎの炒め物での食事となりました。
その間は昼寝をしたり航海の記録をまとめたりと、雨のため一度も船を出ることなくノンビリ過ごしてしまいました。明日の海上が落ち着く事を祈りながら眠りに就くことにします。

よくある質問・その9 「優雅ですね」
ヨットに乗った事がない人は遠くからゆっくり走るのを見てこう表現するのだと思います、船の上では「優雅」などの文字が想像できないほど揺られたり働いたりしているのです。 決して「やさしく」て「みやび」な乗り物ではありません。

よくある質問・その10 「一人で寂しくないですか?」
よくある質問・その11 「水や食料はどうしているのですか?」
どちらの質問も数か月かけて大海を単独で横断している図をイメージして質問しているのでしょう。
港に着くと周りに居る人にまず挨拶をして、「へぇ、千葉から来たの?」の質問から会話が膨らみますし、さらにできるだけ船内を案内するようにしています、全く人と会話をしない事はありません。自動車で一人旅をしていてはこんなに会話が膨らむことはないでしょう。
食料については自動車旅行と同じです、着いた先の港町で多少の食糧は調達しますが、できるだけ食堂や居酒屋を見つけて食事をしていますし、水は時々港で補給しています、決して雨水を貯めて飲んでいるのではありません。